S&P500は「セル・イン・メイ」の格言どおり本当に売るべきなのでしょうか? 約100年分のデータをもとに、米国株と英国株の季節性を比較し、格言の本来の意味や長期・積立投資で見るべきポイントを解説します。(※2026年5月14日収録のマネックス証券YouTube動画に基づく内容です)
【S&P500は今、売り時?】「5月に株を売れ」には続きがあった!米国株に当てはまらない理由を徹底解説

岡元兵八郎氏:マネックス証券のハッチこと岡元兵八郎です。
みなさま、「セル・イン・メイ(Sell in May)」という言葉を聞いたことがありますか? 「5月になったら株を売れ」という、有名な格言です。でも、少し待ってください。この格言を真に受けて米国株を売ってしまうと、実はもったいないことになるかもしれないのです。
「それってどういうこと?」「『5月になったら株を売れ』と言われると、6月から株価が下落するかもしれない」と思ってしまいますよね。しかし、実際にS&P500は5月から10月にかけてもきちんと株価が上がり続けているというデータがあるのです。
では、この格言の本当の意味は一体何なのでしょうか? そして、この格言には続きの言葉があることを知っていますか? 今回の「ハッチの米国つみたて投資クラブ」では、約100年分のデータを使いながら「セル・イン・メイ」の真実に迫っていきます。
「セル・イン・メイ」は米国株に当てはまらない?

スライドのデータをご覧ください。1928年から現在までの約100年分のS&P500のデータを、6ヶ月ごとに区切ってパフォーマンスを比べたものです。注目してほしいのが、5月から10月を示している青色の行です。平均リターンはプラス2.47パーセント、上昇した割合は66.3パーセントです。つまり、3回に2回は上がっているのです。
「セル・イン・メイ」と言われると、なんとなく「株は5月からしばらく下がるのだ」と思いませんか? しかし、データを見るとそんなことはありません。平均的にはきちんとプラスなのです。
ただ、一番パフォーマンスの良い11月から4月は平均プラス5.2パーセントです。比較すると確かに5月からのパフォーマンスは見劣りするものの、5月から下がるのではなく、他の時期より上がりにくいというのが正しい表現だと思います。

スライドのチャートで比較すると推移がより明確になります。水色の線が11月から4月、濃い青の線が5月から10月を示しています。時間の経過とともに差が拡大しています。6ヶ月後には、11月から翌年4月末までがプラス5.2パーセント、5月から10月末までがプラス2.47パーセントと、2倍以上の差が生じていることが確認できます。
S&P500の月別パフォーマンス

続いて、月ごとに細かく見ていきましょう。青い棒が平均リターン、そして薄い水色の線が上昇した割合を表しています。データ全体を見ると9月のパフォーマンスが最も低調ですが、続く10、11、12月は比較的堅調に動いています。つまり、9月の下落局面は買いのチャンスとも言えます。
肝心の5月単体に注目すると、「セル・イン・メイ」の格言が持つイメージに反し、実際にはそれほど弱くはありません。これは意外と知られていないポイントかと思います。
「セル・イン・メイ」の本当の意味とその続き

さて、ここからが本題です。実は「セル・イン・メイ」には続きがあることをご存じでしょうか? 正確には「Sell in May and Go Away, come back on St. Leger's Day」と言い、「5月に売り逃げろ。そして『セントレジャー・デー(9月半ば)』まで戻ってくるな」という意味です。では、「セントレジャー・デー」とは何を指すのでしょうか?

「セントレジャー・デー」をイメージしたこちらのイラストをご覧ください。
広い芝生や華やかなドレス、帽子で溢れるこの場所は競馬場です。

「セントレジャー・デー」は、1776年創設の競馬レース「セントレジャー・ステークス」が開催される日のことで、毎年9月にイングランド中北部のドンカスター競馬場で行われる英国三冠レースの最終戦として知られています。
かつて英国の貴族や投資家、銀行家たちは、5月になるとロンドンの暑さを避けて夏の休暇に出かける習慣がありました。彼らは競馬などを楽しみながらゆっくりと夏を過ごし、秋になって「セントレジャー・ステークス」が終わるとロンドンに戻り、再び株式市場に復帰していました。
「セル・イン・メイ」という格言は、このような特権階級のライフスタイルから生まれた言葉です。つまり、もともとは米国の話ではなく英国発祥の格言なのです。
格言の生まれ故郷、英国株のデータは?

では、英国株の状況はどうでしょうか? ロンドン証券取引所グループが算出する世界的な株価指数FTSE(フッツィー)の中から、今回はFTSE250を取り上げます。
この指数は中型株で構成されており、英国国内を主戦場とする企業が多く含まれています。景気や雇用、消費といった英国国内の動きをダイレクトに反映しやすいため、今回はこの指数を用いて分析を行いました。

スライドに示しているのはFTSE250の5月から10月のパフォーマンスです。1986年から2025年までの約40年間のデータとなっています。数字に注目してください。
平均パフォーマンスはマイナス1.6パーセント、そしてプラスになる確率は52.5パーセント、マイナスになる確率は47.5パーセントとほぼ五分五分の結果となっています。S&P500の同期間の平均パフォーマンスであるプラス2.47パーセントと比較すると、その違いは明らかです。
つまり「セル・イン・メイ」という格言は、実は米国株(S&P500)ではなく、英国株(FTSE250)の株価指数にこそ当てはまるデータといえるのではないでしょうか。

では、FTSE250を1年間保有した場合のパフォーマンスはどうなるのでしょうか? 平均リターンはプラス8.32パーセント、プラスになる確率は74.4パーセントに達します。つまり、5月から10月までの平均リターンがマイナス1.6パーセントであるのに対し、年間を通せばプラス8.32パーセントになります。この落差こそが「セル・イン・メイ」が長年語り継がれてきた、数字上の根拠といえます。

各年のパフォーマンスと平均トレンドを見ると、年ごとにばらつきはありますが、5月から10月は全体的に低調な傾向が続いています。このような約40年分のデータが積み重なり、「5月に売れ」という格言が今でも英国では語り継がれているといえます。

一方で、1月から12月のFTSE250の平均トレンドを見ると、秋以降の10月から12月にかけて、パフォーマンスが一気に改善しています。「『セントレジャー・デー』が終わったら市場に戻れ」という格言の後半部分についても、データがしっかりと裏付けています。
まとめ:「セル・イン・メイ」3つのポイント

最後に「セル・イン・メイ」についての3つのポイントを整理します。
1つ目は、英国生まれの格言であるということです。貴族や投資家が夏の間に市場を離れ、競馬レース「セントレジャー・デー」が終わる秋に戻ってくるというライフスタイルから生まれた言葉です。米国株ではなく英国株に当てはまる格言であるといえます。
2つ目は、米国株に対して「5月に売れ」という人たちがいますが、S&P500は5月から10月に下がるわけではないということです。約100年分のデータでは、5月から10月の期間も平均でプラス2.47パーセントのリターンがあり、66パーセントの確率で上昇しています。「株価が下落する」のではなく、「他の時期と比較して上昇しにくい」というのが正確な表現です。
では、なぜこの期間、米国株は上がりにくいのでしょうか? 主な理由は以下3点と考えられます。
1点目は、流動性の低下です。5月から夏場にかけて機関投資家や富裕層が夏季休暇に入り、市場参加者が減少すると売買高が落ち込み、上昇モメンタムが出にくくなります。
2点目は、決算サイクルの影響です。11月から4月は年度末の業績発表と新年度への期待感が重なる時期であり、相場を動かす材料が豊富です。一方で、5月から10月はその谷間にあたります。
3点目は、心理的な影響です。「セル・イン・メイ」という格言が広く知られているため、5月前後に利益確定する投資家も存在する可能性があります。これが「自己成就的予言」として働き、上値を重くしているのではないでしょうか。

では、なぜ米国株は完全に下落しないのでしょうか? その理由は、市場への継続的な資金流入にあります。積立投資や退職金の運用など、日本からの資金を含め世界中から資金の流入があり、これは季節を問わず続きます。企業の自社株買いも下支えとなり、弱い時期でも平均的にはプラスを保つのではないかと考えます。
つまり、5月から10月が弱いとされるのは絶対的な下落を意味するのではありません。買いの媒体が少ない時期に流動性が下がる相対的な現象に過ぎません。嵐が来なければ、穏やかに上昇を続けることこそが、66パーセントという上昇確率の正体だと思います。
そして、3つ目のポイントは「セル・イン・メイ」が当てはまるのは英国の中型株指数であるFTSE250です。その5月から10月の平均リターンがマイナス1.6パーセントであるためです。つまり「セル・イン・メイ」は英国株の話であって、米国株にそのまま当てはまるわけではありません。
そのため、投資にあたっては、このような格言を知識として持ちつつも、実際のデータを冷静に見極めて判断することが大切です。
資産形成 成功の秘訣

とても重要であるため毎回お話ししている、資産形成成功の秘訣です。1つ目はできるだけ長期で投資を行うことです。2つ目は定時定額、いわゆるドルコスト平均法で投資を行うことです。3つ目はマーケットが上がっても下がっても止めないことです。継続は力なりです。
(※「プログラムのご案内」「ご意見・ご感想」のパートについては割愛します)
成績公開!ハッチの米国つみたて投資

続いては、ハッチの積立成績公開です。私は2020年12月から、こつこつと積立投資を続けてきました。その運用実績をスライドに示しています。
先月、20万円ほど売却し、その資金で故郷の宮崎へ旅行に出かけました。その後も追加投資を継続していますが、驚くことに、売却した20万円を差し引いても、当時の資産額を大幅に上回るリターンとなっています。これはつまり、世界中の株式市場のパフォーマンスが極めて好調だったということです。
直近のデータでは、これまでの投資総額409万1,014円に対し、現在は767万699円に増えています。つまり、約88パーセントのリターンを記録している計算になります。
今月の「ハッチの米国つみたて投資クラブ」は以上です。今回も最後までご視聴いただき、ありがとうございました。ではまた来月お会いしましょう。